地方移住を経験したデザイナーとしての視点から、2010年代中後期における地方創生とスローなライフスタイル文化の共振関係を論じたエッセイ。レフ・マノヴィッチの「インスタグラミズム」概念を援用しつつ、雑誌『ソトコト』の誌面分析を通じて、都市的な美学が田舎ぐらしの表象を規定していた構造を明らかにする。

太田は3.5年間(2017〜2021年)を島根県津和野町で過ごした実体験をもとに、グラフィックデザイナーの視座から地方創生のビジュアル表現を批評的に検討している。マノヴィッチが大規模データ解析から抽出した「インスタグラミズム」の美学──フラットレイ撮影やスローライフスタイル誌『キンフォーク』との視覚的類似──が、日本のローカルクリエイティブにまで浸透していたのではないかと問いかける。

補遺では、ジュリア・カセムのインクルーシブデザイン手法や影山裕樹のローカルメディア論を引きつつ、地域固有のオーセンティシティを備えたプロジェクトの可能性を模索している。