ヴァージニア・ウルフの文学的手法「意識の流れ(stream of consciousness)」と、SNSのタイムラインを意味する「ストリーム」を重ね合わせたエッセイ。ウルフの『書かれなかった長篇小説』に着想を得つつ、Google+のUIデザインが孕んでいた独特の時間感覚──投稿の並列表示や「Masonry」レイアウト、anachronosな時系列の撹乱──を分析する。一種のUI論でもあるかもしれない。
筆者はSNSにおけるタイムラインの形式を日記交換のダイアローグに見立て、Twitter・Facebook・Google+のUIを比較検討する。Google+の「ストリーム」は、単一のスクロール画面に複数の投稿群を横長に並べた「テトリス方式」とも呼べるレイアウトで、異なる時間の投稿が視覚的に並存するという独自の美学をもっていた。イタロ・カルヴィーノ『アメリカ講義』における「書きはじめるその瞬間」の考察と接続しつつ、2019年4月のGoogle+終了を経た後の意識のありかたを省察して閉じる。
本稿は文芸同人誌を出自とする書籍『かわいいウルフ』(亜紀書房、2021年)に収録。同書はヴァージニア・ウルフをテーマにしたファンブックであり、同人誌版『かわいいウルフ』(海の響きを懐かしむ、2019年)からの加筆・改稿版にあたる。miyuki氏によるイラスト──ウルフがGoogle+にプロフィールを持っていたら、という想像画──が添えられているのもすてき。